ー野に咲く花の冒険譚ー
「……お,うぉい! お前ら!! 一体何したんだ?!!?」
「あ……野菜のうるさい……」
勢い良く振り向いた先,
最初に声をかけてきたあの男が息を切らし走っている。
1度に意識を持っていかれ,安心した僕はとても情けない。
「お前こそこんなところで何してる? 村からは大分あるだろう」
「あぁ,肉売りの婆さんがな,お前に代わりに謝ってこいと急かすもんだから……」
それより,と僕へ詰め寄る男。
僕はとっさに後ろへ飛んだ。
「ここまでの道中,俺は夢を見たのかと思ったんだ」
「? 何を……」
「息子が……っ,何度思い描いたか分からない逞しい姿で帰ってきたんだっ。婆さんとこのチビも,みんなっ……」
僕はタルトと顔を見合わせた。
その拍子に,脇腹の辺りから服を捲っていたリリィが男の眼前に露になる。
さっと隠すと,男は瞬いた。
「そいつは……」
サイズは普通ではあり得なく,そもそも人体に花は咲かない。
隠し通すのは無理があると,僕は服を引っ張った右手を退ける。
「リリィ·プッチーニ·エレクトロ。僕の……家族だ」
僕の心配ばかりで,名を与えたことに気付いてもいなかったタルトも,男と同様に驚いた様子を見せた。