ー野に咲く花の冒険譚ー
「でもそれ,男物専門店のメガネだろ,しかもそこそこ高い」
真っ先に指摘したのはタルトだった。
揃いも揃って僕を男と勘違いしていたらしい。
メガネは確か6歳の頃のプレゼントなのだが……
僕を溺愛するおじいさまがくれた,3パターンものサイズのメガネ。
右上に掘ってあるシンボルが,ブランドマークだったのだろうか。
「さあ? 似合うとおじいさまに貰っただけのメガネだから,詳しくは知らない」
「なんでジョンなんて男みたいな名乗りしてるのよ,私てっきり」
「閉じ込められてた話はしただろう? たまに父親がくるんだが,自分の愛する娘だと思うと辛いらしく見えてな。僕が他人の息子みたく思えと,最後のNで略してそう呼ばせるようにしたんだ」
ココラティエはまたあの可哀想と言う表情をした。
「なんでじぃさんはおじいさまなの? 変な呼び方ー」
アイザが割り込んでくる。
「そうか? 他所は知らないが……敬称は敬う相手に使うものだろ? 僕はおじいさまが好きだったから,そうすることにしたんだ」
「へえ」
「じゃあもうお前ら気はすんだろ,今日はもう寝ろ。まだ2日目だ,明日バテられても困る」
タルトの号令に,隊員は散った。