ー野に咲く花の冒険譚ー
2章 心理
朝起きて,川で水浴びをする。
がさがさと音が鳴って小さく警戒すると,ココラティエだった。
「きゃっ……あ,ごめんなさ……ああ違うわ。女の子なのよね,ほんと。それにそこそこある……」
指の網を退けて,ようやく信じられたように頷く。
「じゃあ,ちょっと恥ずかしいけど……私もいい? 皆が起きる前がいいの」
「好きにしたらいい」
どきまぎとした空気が隣にだけ流れているのを察する。
わざわざ声をかけるところだとは思わないが……
「……はあ,何か言いたいことがあるなら言うといい。僕は普段なにも気にしていないし,この間だって冷たく接したつもりもない。言ってくれないと分からないだけだから,そう固くならないでくれ」
「い,いいえ。特に特別なことはないの。ただ少し,お話がしたいと思っただけ,で」
特に用件はないが,話したいという。
話題もなにも持ち合わせておらず,一番経験のないことに僕は困ってしまった。