ー野に咲く花の冒険譚ー
9章 結末
「ここ,か」
アイザが見上げ,純粋そうな瞳をした。
森奥の廃墟と言うからには,もっと廃れ滅びた印象であったけれど。
元宮殿といった様子の大きな建物は,まだまだ余裕で人が住める。
さらさらと時折破片が溢れてくるけれど,僕たちには関係ない。
ところで
「花はどこだ?」
建物と同じだけ大きな花だと聞いていたのに,花どころか葉っぱ1本見当たらなかった。
タルトの体調命令にて,入り口で僕らのみが待たされる。
時間をかけて外を一周したタルトは悩むようでありながらも
「他も問題なかった。怪しさは極まりないが……少しだけ中の様子を探ってから帰ろう」
そう人差し指で古いドアをつついた。
タルト,僕,アイザを先頭に,全員で中へ入る。
「広いな」
万一崩れたら全員を守れるかと僕はリリィに尋ねた。
取るに足らない質問だったのか
「うん」
と余裕そうな短い返事が返ってくる。
『誇りに煤だらけだが,綺麗だろ? ここは金持ちが道楽で建てた宮殿なのさ。夢を詰め込んだ設計だからな,ほんもんより質がいい』
傲慢さのにじみ出た嫌な声が響いた。
誰もが足を止め,警戒に呼吸音さえも殺す。