ー野に咲く花の冒険譚ー
すぅぅと静かに速度をあげて上昇する僕の身体。
反射的に隣のアイザが僕の手を捕まえたけれど,腕がちぎれそうになると悔しそうに離した。
「……っくそ。タルト,捕まえろ! ジョセフィーネ,危ない。1人で行くな!!!!」
肩を押さえるアイザが,横目にうつる。
隊員の戸惑う瞳は,不安げに揺れていた。
『宰相は,おじいさまは優秀な男だった。補佐官から嫌がらせに孫が花つきにされても,すぐに気がついた。許可を出したとも知らなず王に懇願し,時間を2時間与えられ』
広い宮内を真っ直ぐに飛ぶ。
仲間の声が,遠い。
『どんな気持ちだったろうなぁ? お前を解放するために奔走し,知り,自分は罹らないと思っていた自分が孫を襲ったとき』
リリィ何も言わずとも速度をあげた。
リリィだけが分かっている。
僕の気持ちとリリィの気持ちが,今深くリンクしている。
あぁ,だからか。
だからあの時おじいさまは。
驚く僕の顔をみて,襲いかかる自分をみて