ー野に咲く花の冒険譚ー
……自身に発現した,蕾をみて。

あんなにも驚いた顔をして死んでいったのか。



「ははっ滑稽だな。……よお,死に損ないのじじいの味は,どうだった? ……あー,泣いてんのか? クソダセェな」



思いきり突っ込み粉砕し突入したドア。

パラパラと肩から落ちていき,僕はコホッと咳き込む。

リリィと大きく結合し,最早人間を辞めていた。



「おーおーだいじょーぶか? たかが17のガキが無理しちゃってよ。帰れ帰れ……ってのも困るけどな」

「あ"あ。大丈夫だ,問題ない。思えば僕の人生なんて最初からこんなもんだった。目を覚ますのに丁度よかったよ」



玉座のような上座に,僕は不遜な態度で座る男を見る。

四角い顔,顎に生えた不潔に映る髭。

がっしりとした首の骨を折るにも困らない腕。



「なんだ。来る途中のサプライズじゃあ,肩慣らしにもならなかったか。今完了したならそれはどうも」

「こほ……保護施設を襲ったのは……お前か。花はどうしてる」

「ここだよ」




言うが早いか,男は頬杖をついたまま片手を上に広げた。

煙のように赤が広がり,部屋がきしむ程になると一気に縮小する。

ああ,そうか。

リリィ(めいれい)を,警戒しているのか。

なら,距離を詰めない,と



『う,うわぁぁぁあ!!!っ』


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