ー野に咲く花の冒険譚ー
「お前は何度か僕を可哀想だと言ったな」
「え,ええ。だって,何年もたった一人で生きてきたんでしょう? そのせいで,周りの人が今どんな気持ちなのか,疎いんでしょう?」
ココラティエは困ったように戸惑って,けれどするりと言葉を吐く。
なるほど,ココラティエは本心で話しているらしい。
「そうだな,必然とも言える。ただ,僕はそれのどこが可哀想なのか分からない。可哀想なのは寧ろ,いつだって僕の周りにいる人間だ」
思わぬ反論に,ココラティエは目を丸くした。
「だから少なくとも,ココラティエのような他者がそんな風に感じる必要はない」
気にせず続け,目を向ければ
「……今度はなんだ。何故そんな泣きそうな顔をする?」
僕はうるうると目を潤ませ,声を詰まらせ,仕舞いにはぽろぽろと泣き出したココラティエに,心底困惑した。