ー野に咲く花の冒険譚ー
今の話しにどう泣く要素を見つけたと言うのだろう。
「ちがうの……ごめんなさい,私……なんにも分かってなかった。ジョンにあんな風に言えることなんて私,自分に返ってきたくらい。気を悪くしてしまってごめんなさい」
「だから,泣くなって。弓使いが目を使えなくしてどうするんだ,ほら,泣き止め。僕は慰めるのに向いてない」
水に浸かった両手を持ち上げ,僕はココラティエを抱き締めた。
密着したとたんに,小さく声をあげたココラティエが固まってしまう。
「? 泣き止んだか?」
この方法は,おじいさまが僕にしてくれたもの。
試してみると,思ったよりも数段早くココラティエは泣き止んだ。
感情的に涙を流したせいか,顔が赤くなっている。
「え,ええ。ジョンってば声もいいから,錯覚しちゃいそうになるわ。……そんな風にしてくれるってことは,もう怒っていないの?」
「最初からなにも怒ってない。だからもう泣かないでくれ。次も上手く行くかは分からない」
息を吐きつつも微笑むと,ココラティエはザブリと後ろを向いた。