ー野に咲く花の冒険譚ー
外は今,どうなっているのだろうか。
タイムリーな情報を僕が得るのは難しい。
世界はとても,人間に都合よく出来ている気がする。
なんて,ばかばかしい。
あぁ,だめだ。
やはり瞑想は現実逃避に陥ってしまう。
ここには正してくれる人も否定してくれる人もいないのに。
……人の足音?
静かにしていたために,僕はその足音にいち早く気がついた。
パチリと目を開き,メガネの縁に触れる。
誰かが,僕に連絡なく屋敷に立ち入っている。
僕は何も頼んだ覚えはない。
招かれざる客,というやつか。
そんなものは初めてだけど。
僕はすぐに辺りを見渡して,あらゆる道に繋がるドアを開け放ち,隠れられそうな場所も荒らしておいた。
最悪捕まってしまうとしても,情報を得るための時間稼ぎになるといい。
そして本棚の間にほんの少し開く,誰からも死角になる仕掛けを施してある場所に身を隠す。
強盗だかなんだか知らないが,早く帰れ。
音を立ててはいけないのに,舌打ちの出る勢いで苛立った。