ー野に咲く花の冒険譚ー
ここにも,昔は出入りする人がいた。
おじいさまだ。
おじいさまは僕に優しかった。
けれど,彼ももうこの世にはいない。
その上僕が今連絡を取れる人間といえば,父親のみである。
僕はいつもよく分からない端末を持ち歩き,それは世界の全てのショッピングサイトに繋がっている。
欲しいものを検索すれば,いくつかのサイトがヒットするようになっていた。
それ以外の使い道は,それが僕のものだからなのかフラワー病罹患者のものだからなのか,1つもない。
端末で欲しいものを頼めば,僕に逢いたがる父親が届けてくれる。
1度は世界のために僕を殺すことを了承した父親だが,僕を愛していた父はその負い目も相当のものらしいと見えた。
と,久しく逢っていない父を思い出すうちにノックが響く。
随分と礼儀を弁えた不審者らしい。
思わず眉が寄った。
その次には勢いよく扉が開けられ,しかも蹴り開けられた気配を感じ,僕はすぐにその考えを撤回する。
「おい……どういうことだ? ガキが1人いるんじゃないのか」
「は,はい。そのはず,なんですが……えーと」
「ったくいつもいってんだろ!! 情報ははっきり正確にパッと出てくるように揃えとけってな。身長は,外見は!」
「さ,さあ……?」
「なんでこんなやつが俺の部下なんだよ,エリートしかいねぇんじゃねぇのかよ,王宮勤めだろ」
間抜けが1人居ただけ安心したのに,嫌なことを聞いた。
この国,王制だったのか。
そんな奴らが今更何の用だ?
今のところ,出ていく余地はない。
このままやり過ご