ー野に咲く花の冒険譚ー
長い沈黙のあと,あやめに少しずつ水を含ませながら,僕は呟く。
あまりたくさん急に与えてやるのは,あやめによくない。
タルトは僕の言ったものを全て直ぐに用意した。
見つけたときの状況。
その後の僕の行動。
この後の行動。
1行ずつ書いて,紙飛行機にして飛ばした。
ヘンテコなところに落ちたけれど,どこにあるか伝わればそれでいい。
『付いてくるな』
最後に一際強く書いた一言に,タルトはきっと来ないでくれると信じる。
「はぁい,どちらさまで……」
「花つきだ」
僕の言葉に,女の顔色が変わった。
険しくなったその顔をじっと見つめる。
あやめを預けていい場所か,少しの間預ける身として責任を持たなくてはいけない。