ー野に咲く花の冒険譚ー
「その子との関係は?」
「血縁で言えば赤の他人だ。さっき救い出したところで,感染からは1月経っている。ただ,見ての通り死にそうなんだ。だからもし受け入れてくれるなら,2月ほど隔離して世話をしてやって欲しい」
早口で捲し立てた。
どうなんだ,あやめはここにいてもいいこなのか。
死なずに,迫害されずに。
優しく愛されることが出来るのか。
僕とは,違う道を行ける子供なのか?
「迎えに来る。きっと。1年もしないうちに。だから」
「あなたのお名前は?」
僕は息を吸った。
「ジョセフィーネ=マリア·エレクトロ」
「その子のお名前は?」
「──アヤメ=マリア·エレクトロ」
何故か,涙と共に微笑みが浮かんだ。
僕の名前をあげたこの子が,幸せになればいい。
アヤメの花言葉は,よい便りや希望と明るい。
両親は知らないが,命を懸けてくれる兄にも恵まれた子。