ー野に咲く花の冒険譚ー

「ただいま」



少し出ただけでこれ(こんな現実)ならば,いっそまた閉じ籠っていたい。

帰りたいとは思わないけれど,どこか遠くにたった一人逃げてしまいたい。

でも僕はもう,一人ではなくなってしまっていた。

ココが大事だ。

アイザを抜いた皆や,タルトを多少信用している。

旅が終われば,あやめがきっと待っている。

僕はもう,この冒険から逃げられない。



「ココ,少し用を思い出した。さっきの場所へ戻る」

「えっ?! でもあそこにはまだ子供が」



辛いでしょうとココは僕を気遣った。



「直ぐ戻る」



僕はすっかり慣れた微笑みを浮かべ,2階のあの部屋へ向かう。



「……? あの花,動いてないか?」



チロチロと,目的の花は動いていた。

直感的な危機感に,近くにあったものを投げつける。

花は驚いたように身震いし,僕を襲った。

死体の側に花が消えるのは,病が死ぬからでも花が枯れるからでも何でもない。

個として移動していたからだったのか……!!!

僕は最後の力で暴れられては困るから,処理をしに来ただけだった。

僕の花の口に花を放り込むつもりだった。

予定は狂ったけど,構わない。

花の攻撃への反撃に,僕の花はまた大きくなる。

小さな青い紫陽花の花は,ぱっくりと闇の中へ消えていった。

その花は僕に繋がっている。

身体に変な影響が無いといいけど。
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