ー野に咲く花の冒険譚ー
既に花も人も喰らっていることを思い出し,僕は今更かと苦笑した。
「アイザ」
「なに? ジョセフィーネ」
「お前,タバコ吸うだろ。火をくれ」
いいけど,とどこか渋ったアイザは,僕にマッチを渡す。
あのいけ好かない巨漢を思い出して,僕はイライラと感情を膨らませた。
勢いよくマッチを擦る。
「どうするの,それ」
「こうする。……葬式だ」
弔いに家ごと大きく燃やした。
ごおごおと炎は広がりを見せる。
「ちょっジョセフィーネ! 村ごと大火事に」
「だからお前がどうにかしろ」
それでこの前の件はちゃらだ。
「あーもう分かったよ! 木造だらけの貧困村なんて,被害が尋常じゃなくなる」
「頼んだ」
手を合わせはしない。
僕はただこくこくと,目を離さずに炎を見つめていた。