ー野に咲く花の冒険譚ー
「ジョンの気持ちも汲んでやりたかったが,これ以上はだめだ」
タルトは僕と同い年のくせして,最後の決断を迷いなく下した。
「なんか騒がしくねぇ?」
いつの間にか木の幹を背に寝ていた僕の耳に,アイザの声が入る。
静かに目を開けると,確かに少し遠くで何かが聞こえた。
「行こう」
「ジョン」
「何かあったのかもしれない」
花つきなら,どうにかしてやれるのは僕くらいしか近くにいないだろう。
「アイザ,お前が気づいたんだ。運べ」
「え,いいの? どさくさに紛れて好き放題さわるけど」
「…………仕方ない,好きにしろ。タルト,それなら問題ないだろ? 僕はあそこに行きたい」
ココが悲鳴をあげた。
何か言おうとしていたアイザが突然の高音に笑みのまま固まる。