ー野に咲く花の冒険譚ー
「タルト!! せめて私が」
勘弁してくれと,タルトは頭を抱えた。
「いい,俺が運ぶ」
「ちぇ,むっつりが」
「一緒にするなバカ」
「俺一応年上だよ?」
私はタルトの背に手を置く。
初日に他の隊員の背に乗ったため,どうすればいいかは直ぐに分かった。
コツを掴めば,何も恐れることはない。
ただ,流石大剣を使うだけあって,その他の隊員よりもタルトの腕はがっしりと太かった。
落とされることはないと分かっていても,細身な僕の足も時折背中からあぶれそうになる。
タルトは走れと言われれば走ったし,痛いと言えば止まった。
言われるがままに操縦されるタルトは,何度か同じことを繰り返したのちに
「どっちかにしてくれ」
とうとう苦言を言った。
僕はそれに頷いて走れと言ったのに,タルトはどうせ直ぐ止まることになると勝手に歩く方を選択した。
時間を惜しまないなら暴れてやったのにと,僕は舌打ちをする。
アイザはその様子に口笛を吹いて,軽薄そうな笑みを浮かべていた。