ー野に咲く花の冒険譚ー
「僕なら走ってあげられるよ」
「お前は細くて乗り心地が悪そうだ」
「えぇ~ざんねーん」
タルトが足を止める。
僕の顎がタルトの後頭部に激突した。
「……すまない。なんだ」
「この騒動は事件じゃない。耳をすましてみろ」
緊張の無い緩い瞳が僕を見て,ゆっくりと僕を下ろす。
言われた通りにすると,音は少し鮮明に聞こえた。
「耳がいいんだな,タルト。村をあげて楽しそうな音が聞こえる。こんな時間に何してるんだ?」
夜も始まったばかり。
これから静まっていく時間に,寧ろ騒ぎは大きくなっているようだった。
「お祭り……結婚式じゃない?」
ココが浮いた声で言う。
心なしか行きたそうにしていた。