ー野に咲く花の冒険譚ー
「おっ。お前,折角色んなもんがただで並べられてるのに,わざわざ俺んとこの買うのか。見る目があるな」
「まあな,俺は外から来た部外者だ。見学の礼に金くらい落としていくよ」
タルトは近くに並ぶ屋台の1つへ顔を出すと,鹿肉の串焼きを持って帰ってきた。
「お疲れ,ジョン。お前は昼も寝ててまだだったろ? これでも食えよ」
「……ありがとう」
僕は素直に受け取って,初めてのそれを口にした。
「良かった。食べやすいな」
「そうだろ? 酒があれば良かったんだが,お前はまだだろ」
「あそこにいては調達は無理だが……僕がその決まりを守る義理はないな。どうせもう17だ,大して変わらない」
近くにいる酔った男は,気前よく僕に酒を渡す。
クッと傾け流すと,普通のそれとは違う感覚がした。
味も匂いも喉を通る感覚さえ。