ー野に咲く花の冒険譚ー
「つまらない話は止めてくれないか,タルト。気がつかれる,無駄だ」
いつまでもぐだぐだと続ける話じゃない。
嫌気を存分に見せてやれば,タルトは口をつぐんだ。
僕が進める歩に,段々と遅れていく。
勝手にしろと僕は言った。
だから振り返りもしなければ,声をかけられ足を止める。
「なんだ」
「ジョン,お前はそんな口調や見た目でも,男になりたくてそうしてるわけじゃないんだろ」
「は? なんだそれは。そんなことを望んだことはない。僕は僕に合う物を選んでいるだけ。それ以上も以下もない」
ザリ……と,タルトが地面を踏みしめた。
握られた拳が,僕の目を引く。
「だったら,そんな未来があるかもと想像するくらいいいじゃないか。無駄なんかじゃない,ただの可能性の1つだろ。お前はもう……他人と生きることを諦めなくてもいいだろ」
「いつ死ぬか分からない」
「関係ない。人の心は,一瞬報われればそれが全てだ」