ー野に咲く花の冒険譚ー
その夜,僕はタルトが火を起こすのを手伝った。

いつもと変わらない僕に,タルトは口数が少ないと言う。

けれどココの打ち明けた言葉を,そのまま告げてはいけないような気がしていて。

僕は小さくかぶりを振った。



「気にするな」



目敏いタルトに,何もないとは言えなくて。

タルトはそれだけ聞くと,それならいいと頷く。



「ココの元気がない。朝すれ違った時には目も腫れていたような気がする。ジョン,なにか知ってるか?」

「……さあ,ココにだってそんな日もあるだろう。いつも元気に笑ってるだけがココじゃない」

「ジョンもだな」



少しの間にやはり目敏く気がついたタルトはそれを口にはせず,そんな意地の悪い言葉を返してきた。



「分かってる。幼馴染みだから,大事だっていいたいんだろ。でも心配するな。これは僕達の問題で,既に大元は解決してる。どちらの事も心配することはない」

「……悪かった」



僕の参ったため息に,タルトは軽く頭を下げる。

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