ー野に咲く花の冒険譚ー
「やめろ,離せ! 僕が外に出れば,これは広がる。僕のはとくに不明な点の多い,言わば重篤の病だぞ?! 感染力がどれくらいなのか,どうなるのか,僕にだって分からない!」
「だぁから,大丈夫だって。つっても信じないか,何年も閉じ込められてりゃあな。ま,もういいから黙ってろって」
言うが早いか。
そいつは僕の身体を反転させ,思い切り腹を殴った。
花の葉が僕を守る。
けれどそいつはそんなこと心得ているのか,打撃の衝撃だけはきちんと僕へ届いた。
「かァッ……」
けほっと息をはいて
「んーじゃあ取り敢えずそいつ拭いとけよお前。一応こいつの家だかんな。中身も匂いつけたただの水だ,本物もあるが。安心して後処理しろ」
「はっはい! ……ところで,ほんとに大丈夫なんですか??!」
「上が言うにはな。ロシアンルーレットだとでも思えばいいだろ,ほら楽しい」
「楽しくありません!!」
僕は意識を手放す。
僕をどこに連れていく気だ……
最後に感じた感情は,悔しさと,苛立ちだった。