ー野に咲く花の冒険譚ー
0章 邂逅
「……それで,あんたが王さま?」
目を覚まし,目の前の年配が冠を被っているのを見つけて,僕は口を開いた。
「顔色1つ変えず,目覚めた2秒でそれを言うか」
しゃがれた声にやたらと長い真っ白な髭。
まるでサンタクロースだと思いながら見つめ続ける。
で,用件は?
「逆にあんたは人を拐っといて一言目にそれか? 意味のないことが好きなんだな」
「私を誰だと思ってる?」
「誰? 知らないな,そんなの。僕はこの国が王政であったこともついさっき知ったし,仮にそうだったとして,僕に何の関係がある」
この国に愛着なんてない。
王だと言う年配から,何か恩恵を受けたこともない。
住まわせて貰っていること,生かして貰っていること。
そんなもの微塵もありがたくない。
寧ろこの国は僕を殺そうとした身であるし,貰ったものと言えば監禁生活12年。
大人しく簡単に出られる場所に収まっていてやったのに,これ以上何を求めることがある?