4K幼馴染は溺愛がすぎる
「夕、痣の話、聞いてくれる?」

そう聞くと、夕は心配そうな顔をして再び鈴音を抱きしめ

「無理しなくていいよ。すずが話したくないならずっと話さなくてもいい。きっと、思い出すのも辛いはずだから。すずが話してくれても、話してくれなくても俺はずっとすずの事だけを好きだからね。」

優しい声で鈴音の頭をポンポンと撫でてくれる。
きっと気になっているはずなのに、鈴音の事を考えて無理に聞こうとはしない。
それに、鈴音が1番恐れていた話した後の事。
鈴音の不安を分かっていての事なのか、鈴音をずっと好きでいてくれると言う夕の言葉は鈴音の心を安心させる。元カレには痣を見せる前に同じような事を言われて裏切られたが、あいつとは違う事は鈴音がよく知っている。

「ううん、きっと夕にとっては気持ち悪い話でしかないと思うんだけど、聞いて欲しい。お母さん以外誰にも言ったことないから少し緊張するけど。」

ははっと無理やり笑って見せると

「大丈夫。大丈夫だよ。ちゃんと聞くから。」

先程と同じように、鈴音の頭を撫でる。
それが無性に安心して、鈴音の心から緊張を解いてくれた。

「途中で泣いちゃうかもしれないし、上手く伝えられないかもしれないけど、最後まで止めずに聞いて欲しい。」

「分かった。」

夕は鈴音から身体を離し、代わりにギュッと手を繋いでくれる。

「夕はさ、私のお父さん、、覚えてる?」

「おじさん?うん、覚えてるよ。優しくて良い人だったイメージ。」

「そう、だよね。」

これから話す事の整理を頭でする為にふぅ、と一息ついていると

「でも、すずは苦手だったんじゃない?」

思わぬことを夕に言われて鈴音はギョッと夕に視線を移す。

「なんで分かったの?」

「んーなんかおじさんといる時のすずって早くどっか行きたそうって言うか、同じ場所に居たくなさそうな感じがずっとしてた。でも女の子がお父さん嫌がるなんて良くあることだしうちのねーちゃんも父さんへの態度酷かったから似たようなもんかなってそこまで気にしてなかったんだけど。そもそもおじさんと居るとこ見た事あんまなかったし、、、」

父は学校行事などにも参加することは無かったので夕が会ったと言うのは、近所の人に怪しまれない為にと月に何度か無理やり外に出されていた時に会ったほんの数回の時のことを言っているのだろう。

その数回で、しかも鈴音も父に後から怒られる事を避けるように円満な父子を演じていたにもかかわらず、鈴音の異変に気づいていた夕は本当に凄い。
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