4K幼馴染は溺愛がすぎる
小1時間電車に乗ると2人の故郷に着く。

鈴音と夕は、いつものように仲良く身を寄せ見慣れた家の扉を開ける。

「お母さーん!帰ったよー!」

そう言うと、扉の奥からパタパタと足音を立てながら笑顔でやってくるエプロン姿の母。

「あらあら鈴音、夕くん、おかえりなさい!」

2人の姿を見ると、母は嬉しそうに上がって上がって〜と見るからにはしゃいでいる。

靴を脱いで家に上がろうとした時、少しの段差にも関わらず、夕はいつものように鈴音の腰に手をやる。

その様子を見た母は、ポカン。と口を開けている。

「あなた達、、、もしかして、、、」

「お母さん、あのね、、、」

今だ!と思った鈴音が口を開くと、夕が鈴音の肩に手をやり優しく微笑んでそれを止める。

「おばさん、挨拶が遅くなってすみません。少し前から鈴音さんとお付き合いさせてもらってます。」

深くお辞儀をして手土産を渡す夕に、母は驚いた表情を見せたものの、それを受け取り優しく、嬉しそうに笑った。

「さぁさぁ、立ち話もなんだしとりあえず中に入りましょ。ご馳走作ったのよ!」

嬉しさが伺える足取りでリビングの方へと進んでいく母。

リビングへと進むと、母の言った通りそれはもう豪華な食べ物がズラリと並んでいた。

「お母さん、、、夕が来るからって張り切りすぎだよ、、、」

「ふふっまぁいいじゃない!さっ食べましょっ♪」

母に言われるがまま、箸を進めていく。
食卓に並んでいるものは全て母の手作りで、鈴音の心は食べる事に暖かくて涙が出そうになった。

何気ない話をしながら一通り食事を終えると、夕は箸を置き、母の方を真っ直ぐ見る。

「おばさん、今日はすずと同棲させてもらいたくて挨拶に来ました。」

すると母は、一瞬不安そうな顔をしたものの直ぐに明るい表情に戻し

「夕くんなら安心だわ。鈴音、だらしない子だけどよろしくね」

ふふふ、と笑いながら言った。
緊張していたようで母からの了承を得ると、ふーっと深呼吸をしている夕の手を包み込むようにして握って笑いかけると、夕もいつものように優しく笑い返してくれる。

夕の両親とは明日会うことになっている為、夕は一足先に自分の家に帰っていった。
久しぶりの親子水入らず。
家事を手伝ったり、2人で昔の話をしたりして楽しく過ごした。

突然、母の顔が曇り心配そうな顔へと変わる。

「鈴音、夕くんの事を信じてないわけでも、2人を反対している訳でもないのよ。。。でもあなた同棲なんてだいじょ「お母さん。」

母の言葉を遮るようにして、母の手を取る。

「夕にはね、全部話してるの。」

すると母は、驚いた顔をする。

「全部話して、その上で夕は私の事が好きだって言ってくれたの。受け入れてくれて、一緒に向き合ってくれてるの。」

「そう」

目に涙を浮かべながら振り絞ったように一言だけ言った。
ふぅ、と呼吸を整えた母は次の瞬間にはいつもの元気な笑顔で

「この調子なら、結婚もそう遠くなさそうね?!」

とウキウキ声で聞いてくる母に、鈴音は顔を真っ赤にして

「もう!気が早いよ!ほら!早く寝ようよ!!」

と布団を襖から取り出す。
母は、クスクスと笑いながら手伝ってくれる。
久々に母と並んで寝るのを嬉しく思いながら、布団に入ると短くはない移動時間と気を張って疲れていたのかあっという間に眠りについていた。
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