4K幼馴染は溺愛がすぎる
翌朝、夕との待ち合わせ時間に合わせて準備をしているのだが、鈴音は朝から緊張でドジを連発させていた。

コーヒーを注ぐときにはコップから溢れさせ、1歩歩けば足を絡ませズッコケたり、洗い物をすると食器を割るわ、洗濯機を回せば洗剤を入れすぎて泡だらけにするわで母からもう自分の事だけに集中しろ!と怒られて、今に至る。

自分の支度は何とか済ませ、あとは時間に間に合うように家に出るだけだ。
父の件で引っ越す前は夕の家までは少し遠かったのだが、今では徒歩5分程度とすぐそこである。
そろそろ家を出ようかな〜と時計を眺めていると

ピンポーン

と家の呼び鈴が鳴る。
母がパタパタと玄関に出ると、あらあら〜なんて嬉しそうな声を上げており、近所の人かな、なんて思っていると

「鈴音〜早くしなさい!」

と急に声をかけられ、

「今出ようと思ってたの〜!」

と子供のような台詞を吐いて荷物をまとめて玄関へと向かう。
すると、そこで玄関に立っていたのは夕の家の前で待ち合わせしていたはずの夕。

「え!なんで?!」

「迎えに来た」

ふわっと包み込むような優しい笑顔でそう言ってくれる夕に思わずキュンとする。

「も〜1人でも行けたのに〜」

なんて、照れ隠しバレバレの言葉を言いながら靴を履いて立ち上がる。
平静を装っていても、やはり鈴音の心は緊張と不安でいっぱいで前など見ているようで見ていない。
まだ開けていない扉に突っ込んで行く鈴音を、慌てたように引き寄せて腕の中に収める夕。

そこでやっと意識が前に向き、扉を開けていない事に気づいて夕を見上げると、相変わらずの優しい笑顔を向けてくれる。

「ちゃんと前見て歩こうね、すず」

「う、うん」

恥ずかしさで顔を真っ赤にしていると後ろから母が追い討ちをかける。

「あらあら、随分鈴音は夕君に甘やかして貰ってるみたいね?夕君、こんな子だけど改めてよろしくね」

そうだ。母の前だった。と慌てた様に夕の腕からすり抜けると、夕に少し不満そうな顔をされる。

仕方ないではないか、と視線で訴えると夕は何故かニッコリと笑い

「こちらこそよろしくお願いします。ではすずの事、少しお借りしていきますね」

と母に挨拶をして、鈴音の手を引き家を出る。
家を出るなり、夕の家の方向とは少し離れた所に向かう夕。
聞かずとも、どこに行こうとしてるのかはだいたい予想がついてしまう。
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