4K幼馴染は溺愛がすぎる

ココアも飲み干して、鈴音も落ち着いたのを確認した夕が

「そろそろお風呂入ろっか」

と提案する。

「うん、じゃあ先ささっと入ってくるね」

そう言って夕から離れようと立ち上がると、グィッと元の場所に引き戻される。

「え?あ、先に夕入る?」

「ん〜?すず俺と離れたくないって言ってたなぁ!じゃあ一緒に入るしかないなぁ!」

と鈴音をそのまま抱き上げて脱衣場に向かう夕。

「え!ちょっと!!」

慌てる鈴音に構うことなく歩き進める夕。

引っ越して来てから、"夕に慣れる為"ということを理由に何度か一緒にお風呂に入ったことはある。
だが、毎度恥ずかしくて断り続ける鈴音に基本は夕が折れてくれるので片手でも余る程しか入ったことはない。

脱衣場に着くと下ろされて、夕は上機嫌な様子。

「あの、、明日、、とかじゃ、、ダメ?」

「だめ。すずはそう言って明日も入ってくれないから。」

即答で断られる。全てお見通しなのだ。

「んんんーー、じゃあせめて後から入ってきて!!先に体洗っておくから!!」

夕は少し不機嫌そうな顔をしたものの、分かった。と折れてくれた。

「5分後には入るからね。あ、あと今日は特別に泡風呂にしといたから。」

と言っていつの間にそんな用意までしてくれたのかと思いながら、5分以内に洗わなくてわ!と急いでお風呂に入る。

超特急のスピードで体を洗い、夕が用意してくれていた泡風呂に浸かる。

「ふ〜沁みる〜。」

と独り言を言ってもくもくと溢れている泡を触る。
泡風呂は浸かっている時に自分の体が見えないから好き。
ゆっくりと、何も気にせずに疲れを癒す事ができるから。

あ、、、、。

夕はきっと、ここまで分かってやってるんだ。

父親に会い、久々に発作に出た鈴音。
今この痣を目にすると、鈴音にとっては追い討ちになる可能性があると。
だかららきっと、5分なんて時間まで指定して余計な事を考えないようにしてくれたんだ。

事実、鈴音は早く洗わねばと躍起になっていた為、痣の事や父の事は頭から消えていた。

夕の優しさに気づき、涙が出そうになるのをキュッと唇を噛んで抑える。

すると

「入るよ〜」

と夕がなんの恥じらいもなく入ってくるので、鈴音は慌てて目を覆って夕に背を向ける。

「わわ!ちょっと!!」

慌てる鈴音に夕はクスクスと笑って

「何〜?何回か一緒に入ってるじゃん」

と夕も体を洗い始める。

男の子というのはこんなにも洗うのが速いのかと始めは驚いた。
今日も安定のスピードで、鈴音の半分位の速さで洗い終えて鈴音を後ろに入ってくる。

「ふ〜、湯船に浸かるのはやっぱりいいね」

と濡れた髪をかきあげる夕に、ドキッとしてしまう。

「ん?どうしたの?」

当の本人はキョトンとしており、鈴音は泡風呂に顔を埋めて赤い顔を見えないようにする。

「もうのぼせるから上がる!シャワーするからこっち見ないで!!」

八つ当たりのようにそう言うと、夕はへらへらとしながら

「え〜もう上がっちゃうの〜?俺は入ったばっかりなのに」

なんて言ってくるので

「上がるの!!!」

とむくれて言うと、分かったよ〜と手を目に当てて隠してくれる。
その隙にシャワーを浴びて、浴室から出る。

浴室から出ると、中から

「あ〜あ、寂しいな〜。せっかく泡風呂にしたのにな〜」

と夕から不満の声が出ていたが無視して、体を拭いていた。

夕が出てくるまでに、簡単に買ってきたものでご飯を作っていると

「美味しそ〜」

と今度は夕が鈴音にくっついてくる。

「もうできるよ」

と言うと

「じゃあ、お箸とか準備しとくね」

と鈴音の頭に優しくキスをして準備に取り掛かる。

「今日も美味しいね、ありがとう。」

とただ炒めただけのこんな物まで嬉しそうに食べてくれる夕に胸がキュッと嬉しくなる。

いつもと同じようにテレビを見ながらご飯を食べ終え、寝室へと移動する。

夕は、ベッドに入ると当たり前のように鈴音を抱きしめ

「おやすみ」

と軽いキスをする。

いつもはこれで、眠りにつくのだが今日は鈴音からもキスをする。

何度も

夕への気持ちを伝える様に

次第に深くなるキスに、夕が

「すず、これ以上は」

と言うのを無視するように唇を重ねる。

「夕、お願い、、抱いて。」

突然の鈴音の言葉に、夕は驚いた様に目を見張った。
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