4K幼馴染は溺愛がすぎる
鈴音は父親に"お金は渡さない"と言ってから、何も言えずに、ただただ恐怖心を隠す事でいっぱいいっぱいだった。

夕がそれに気づいているかのように、鈴音を背に守る様に隠して話を進めてくれた。
怒鳴り、夕に殴りかかろうとする父に身を震わせ夕を心配したのも束の間、夕はまるで子供の相手をするかのように父の手をひねり揚げて黙らせてしまった。

これには鈴音もびっくりだ。なんせ、夕は見た目からして背が高いからかひょろっとしているように見える。
筋肉が無いわけではないのだが、鈴音はかつて父親から暴力を受けていた事もあり、その父親に夕が敵うとは思ってもいなかったのだ。

その後も、鈴音には聞こえないような声で何か言ったと思うと怒り狂ったり、怯えたり百面相の様に表情を変え、しまいには捨て台詞を吐きながらサインをして帰って行ってしまった。

夕は振り返ると、いつものように優しい笑みを浮かべて鈴音の頬を包み込む。
しかし、いつもと同じように見えても先程まで父親と言い争っていたからかピリついており、夕からは"男の子"というよりも"雄"の様な覇気が感じられ、先程まで怯えていたはずなのに知らない夕の姿に胸がギュッと締め付けられるように見とれてしまう。

すると、夕は鈴音の頬を擦りながら悲しそうな、傷ついた様な顔をした。

「夕、、、?」

思わずそう口にすると

「ごめん、ピリついてて怖かったでしょ」

と優しく笑う。
その時にはもうピリついた空気もなくなっており、"いつもと同じ夕"に戻っていた。

少しの違和感を覚えながらも、2人で家へと帰る。
帰り道、夕は何か考えているようで鈴音が話しかけると答えてはくれるものの、夕から何かを喋ると言うことはなかった。
元々夕は口数が多い方ではない為、いつも通りと言えばそうなのだが、鈴音は"違和感"がどうにも拭えなかった。

家に帰ると、"先にお風呂で温まっておいで"と夕に言われて先にお風呂へと向かう。

「はぁ〜、、。夕、なんか変な気がするんだけど気のせい、、、じゃないよな。」

ぶくぶくと湯船に顔を埋めて、不安の原因が何なのかを考えるも悪い方に悪い方に思考が流れていく。

もしかして夕があの人と会って、その子である私にも嫌悪感を抱いたり、、、

あ〜!ダメダメ!夕はいつも私にちゃんと気持ちを伝えてくれてるんだから、大事にもしてもらってる!ネガティブダメ!絶対!

顔をパンパン!っと気合いを入れるようにして叩き、お風呂を出る。

「夕、お風呂、、」

「ん。」

そう言ってポンっと鈴音の頭を撫でてお風呂へと向かう夕。

あ〜〜〜!!!
ぐるぐる考えてると夕の行動全てがいつもと違って見える、、、。
夕が出てきたら、ちゃんと聞こう。
お礼もまだちゃんと言えてないし。

ふ〜っと深呼吸をして夕が出てくるのを待つ。
夕はいつも10分程で出てくるはずなのに、その10分が凄く長く感じる。

ガチャっと音がして振り向くと、タオルで髪を拭きながら夕が出てくる。

「ゆ、ゆう!!ちょっと話せる、、かな?」

「、、?。うん」

夕は少し不思議そうにしながらもカチコチになって座っている鈴音の隣に腰を下ろす。
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