4K幼馴染は溺愛がすぎる
モニターに写っている夕を見て、動揺が隠せずあたふたしていると脱ぎっぱなしにしていた服を踏んで思わずこけそうになる。

「っつ〜。ゆ、ゆうどうしたの?」

モニター越しに夕に話しかけると、夕は表情を変えることなく

「開けて」

どうすればいいのか分からず、とりあえずエントランスのロックを解除する。
すると、すぐに玄関のインターホンが鳴らされる。

さっきから妙に緊張していて、バタバタと焦って玄関の扉を開ける。

「来るなら連絡くれたらいいのにぃいっっ!?!」

扉を開けるなり、夕の胸に閉じ込められる。

「え!ちょ!この前から急になに!?」

そう言うと夕はきついほどに抱きしめていた腕を少し緩めてはくれたものの、解いてはくれない。
見上げると、夕は悪気ない顔をしていて

「だって、これくらいしないとすず、俺のこと男として見てくれないでしょ?」

と鈴音の顔を覗き込むようにして言ってくる。
あまりに真っ直ぐに見つめてくるから、顔が一気に熱くなる。

「すず、顔真っ赤」

さらに追い討ちをかけるようにおでこにコツンと頭を当ててくる夕。

「ぐぁ!ちょ、まじで!!」

そり返るようにして、夕から離れる。
すごい勢いで体を動かして乱れた髪を整えながら、息を整える。

「はぁ、で、どうしたの、、?」

「篤人からさっき連絡きて、呑んだ時に俺のこと話したって言ってたから。」

あっくんめ、あっちこっちに火種をばら撒きやがって。。。
面倒見の良いあっくんにはいつも助けられているが、今回ばかりはもう少し一人で考えたかったものだ。

このまま玄関で立ち話もなにかと思い、リビングへと夕を入れ、お茶を出す。

「あの、まず、あんな大事な事、お酒の勢いとは言え、冗談で言っていい事じゃなかったと思う、ごめん。。。」

「いや、俺もすずは冗談で言ってるの分かっててああ言ったから。で、考えてくれた?」

ずっと下を向いていた鈴音を覗き込むようにして聞いてくる。

「うん、でもやっぱりいきなり結婚、って言うのはちょっと、、。夕のことは大好きだし、大切で信頼もしてるけど、恋愛感情かっていわれたらそうじゃないから。。」

「俺と結婚するの、嫌?」

「嫌とかじゃなくて、、結婚とかってなるとやっぱり体の関係とかも付いてくるわけで、、、夕とそういう事するとか恥ずかしくて考えられない。。」

そう言うと、クスクスっと笑いながら

「ほんと、すずは真面目で可愛いね。じゃあ、俺がキスした時嫌だったの?ごめんね。」

全く思っていなさそうに、取ってつけたように笑いながら謝る夕。
しかし、問題はそこである。
この前キスをされた時、今日抱きしめられた時、全く嫌ではなくて、ただただ恥ずかしかっただけなのだ。
もう30手前、それなりにダメ男とだが付き合ってきて得た私の勘が夕を全くの無しとは言っていない事に自分でも驚きが隠せない。
かと言ってそんな中途半端なことを伝える事はしてはいけない。

「あの時は、別に、その、、。」

どう伝えれば思わせ振りにならずに伝えられるか考えていると、先に夕が口を開く。
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