4K幼馴染は溺愛がすぎる
夕がのそのそとクローゼットから服を選び、まだ眠そうな目を擦りながら洗面台へと移動する。
その様子が可愛くて、ふふっと笑いながら鈴音もその間に洗濯を干したりと出来ることを済ませておく事にした。
今日は一段と寒くてベランダに出ると思わず身震いをしてしまう。さむさむ〜と、独り言を言いながら洗濯を干していく。
「言ってくれたら手伝ったのに」
とガラガラっと扉が開く音と共に夕の声がする。
振り返ると、そこにはふわっとセットされた髪の毛に、いつもとは少し雰囲気の違う服。
鈴音が着ている服の色と少しリンクしているのに気づき少し気恥しい気持ちになるものの、そんな気持ちが吹き飛ぶ程にかっこいい夕。
気づいた時には手に持っていた洗濯物を下にポトッと落としてしまっていた。
「あ!落としちゃったじゃん!!」
慌てて拾ってパンパンと叩いて干そうした手を夕に後ろから包み込まれて、再び落としそうになった所を夕がすかさず反対の手でキャッチする。
そのせいで、後ろからハグをされた様な感じになってしまいさすがに慣れてはいるものの、今日の格別のかっこよさにふわりと香るいつもとは違う香りの夕に鈴音はまた固まってしまう。
「危なかったね、、、なんで固まってるの?可愛いね」
当たり前のようにチュッと頭にキスをする夕。
パチパチとその洗濯を干すと、再び鈴音の手を触り
「凄い冷たくなっちゃってる、残り俺やっとくからすずは部屋で温まってて?」
両手で温めるように鈴音の手を包み込んでそういってくれるも
「今日は誕生日なんだから私にやらせてよ!!」
と言うものの、夕は有無も言わさない様子で背中をグイグイと押して部屋へと鈴音を押し込んでいく。
鈴音達はいつも出来る方がする、というスタンスで家事を分担しているものの、殆どはいつの間にか夕が終わらせてしまっている為、割合で言うと2:8くらい。
初めの方は申し訳なくて、夕の負担になっているの様な気がして、キッパリ分担しようと提案したのだが
"すずの為にできることは何でもしてあげたいし、やりたくてやってるんだから今まで通りがいい。家事してすずに褒めてもらう時間が無くなるのがいやだから俺の楽しみを奪わないで"
とまで言われてしまい、その後何度か提案しても同じ答えが返ってきて、一向に鈴音に家事をする時間を与えてくれない為、今では諦めて朝ご飯や夕が遅い時に家事や夜ご飯を作るのみになっている。
今日くらいはと思っていたものの、そうそうに失敗である。
しかし、今日のプランは絶対に喜んで貰えるに違いない!と、気合いを入れて温かいコーヒーとココアをいれていると、夕がベランダから帰ってきてスタスタと鈴音の方にやって来て
「温まらせて」
そう言いながら鈴音に抱きついて手を絡めてくる。
抱きついてはいるものの、鈴音のヘアセットを崩さないように加減をしている当たりさすがだなあと思いながら夕を見上げて
「寒いのに干してくれてありがとう」
笑顔を向けてそう言うと、夕は嬉しそうに笑ってキスを落とす。
「コーヒーいれたよ!これで温まろ!」
予定の時間にはまだ時間がある為、テレビを見ながら少しゆっくりする事にした。
あー!早く驚いた顔が見たいなあ!とソワソワする鈴音を見て、夕は何を言うわけでも聞くわけでもなく嬉しそうに幸せそうにニコニコと笑っているだけだった。家を出発する時間になり、どこに行くか尋ねてくる夕にご機嫌に"秘密〜!"と答えながら次々と電車やバスを乗り継いで山奥へと進んでいく。
普通、こんなにも山奥に行先も伝えられずに連れていかれると少しは不安に思っても良いはずなのに、夕を見てみると不安そうな様子は一切なく、むしろ幸せそうな顔で鈴音をみてニコニコしている。
「夕、不安とかないわけ??」
教えていないのは鈴音自身にも関わらず、たまらず夕に聞いてしまった。
すると夕は、きょとんとした顔をして
「なんで不安になるの?」
と聞いてくるので
「こんな山奥に連れてこられてるんだよ??」
すると、クスクスと笑いながら
「テレビの見すぎだよすず」
可笑しくてたまらないといった様子でずっと笑っている。
「もう!そんなに笑わないでよ!」
そう怒って見せると、ふーっと息を整えて
「すずに連れていかれるなら、俺は地獄でもどこでも喜んでついて行くよ」
とクスッと少年のように笑ってみせる夕。
そんな事を恥ずかしめもなくサラリと言ってみせる夕に、鈴音は顔を赤らめる。
「も〜〜〜!!!」
両手で顔を覆っていると、降りる駅名を車内アナウンスが知らせる。
「あ!ここだよ!早く早く!!」
夕の背中をグイグイと押して駅のホームへと急かす。
山奥の駅、当たり前ように無人で切符を箱に入れるタイプで昔の自分たちの最寄り駅を思い出させて懐かしい感情が湧いてくる。
駅を出て駐車場に行くと、そこには鈴音が頼んでいたある人達が
(((おめでとうー!!)))
パーン!と銃声かのように響き渡るクラッカーの音。
ビクッと体を震わせた夕だが、その奥にいる人たちの姿をみてクスッと笑う。
「ありがとう」
心から嬉しそうにそういう夕に鈴音はソワソワとしながら
「ねぇ!びっくりした??!今年もみんな勢揃い!!びっくりした?!?」
そう言って夕の顔を覗き込むと、夕はニコッと笑って鈴音を抱き寄せて頭に軽くキスをした。
「うん。びっくりしたし、すっごく嬉しい、ありがとう。」
周りにみんながいる事も忘れてイチャつく2人に耐えられないといった様子であっくんがキレ始める。
「おい!お前ら!!俺らいるんだからな!!そーゆーのやめろよな!!!」
プンプンと怒っているあっくんを気にもとめない様子で鈴の頭の上に顎をおき
「いーじゃんもう俺ら結婚するんだからこれくらい新婚なら普通でしょ」
と、こんなにもあっさりと言うものかと鈴音も空いた口が塞がらない。
((((((えーーーーー!?!?!)))))
今度は山中に響き渡るアラサーの叫び声。
「ちょっと待ってどーゆーこと?!」
「聞いてないんだけど?!?」
「いやーん!すずおめでとう♡」
「嘘だろ、、、また既婚者増えんのかよ、、、」
皆んな口早々に質問が途絶えないと言ったように尋ねてくる。
「ちょっと夕!こんなサラッと報告しないでよ!!」
そう怒ると
「ごめん、だって嬉しくて」
と笑ってみせる夕の顔を見ると、なんでもいいや、と思えて皆を落ち着かせる事にまずは全力を注いだ。
そしてまだ駅前にいることに気づいた鈴音達は早く場所を移動させなければと、二手に別れて車で移動することになった。車はてっきり夕と一緒だと思っていた鈴音だが、2人を一緒にしたら片方の車に乗った者が聞きたいことが聞けずに事故を起こすだのなんだのと言われて別々になってしまった。
鈴音も少し残念ではあったが、まぁみんなが自分の事のように喜んでくれている事が分かって嬉しくもあった。
しかし、明らかに不機嫌そうな男が1人。
言うまでもなく夕である。
今日は俺誕生日なんだけど。
すずと離される意味が分からない。
新婚なのに。
といつもはみんなに言われるがまま、されるがままに動いていた夕が、とんでもなく駄々を捏ねていた。
鈴音にはそんな姿も可愛く見えてクスッと笑っていると。
夕とバチッと目が合い、ムッと怒ったような顔を向けられる。
いや、怒っているのだ。
俺と一緒じゃなくてもすずは平気なのかと言わんばかりの不満顔である。
そんなかたくなに車に乗ろうとしない夕に
「夕、乗る。早く。」
と佳子が車を指さして言う。
すると夕は鬼でも見たかのような怯えた顔をして車に大人しく乗り込んだのだ。
佳子は昔からお母さん的存在で、みんなをまとめてくれる。空手の有段者でもある佳子には誰も挑むことはしないのだ。かつてあっくんが佳子に何度注意されても、ふざけて返して校則違反を繰り返していた時、目の前で素手であっくんの椅子を真っ二つにした事があり、それ以来は幼なじみ達の中で、"佳子を怒らせてはいけない"というのが暗黙のルールとなっていた。
とはいえ、佳子は普段は気さくで優しい性格だ。正義感が強いため、ルールを破ったり悪い事をした時に相手を思って怒るのが佳子。
今回に関してはあまりにも夕も諦めないし周りも諦めないのを見ていて限界が来たのだろう。と鈴音は予想した。その予想は的中していたようで
「ふ〜、あまりに長いからついキレちゃった。ごめんね、夕。」
と謝っている。
夕はと言うと、不機嫌そうに
「身の危険を感じたから仕方ない。すずとは後で会える
し。。。」
全く納得してない顔で答えている。
もう既に車に乗り込んでいる夕と佳子と沙奈の3人と杏奈、あっくん、あゆちん、鈴音に別れて移動することに。
「ねぇ、あんたいくまえに旦那の機嫌ちょっとでもいいから直してきて!」
杏奈がコソッと鈴音に耳打ちをする。
「えぇ〜?!無理だよ」
そう答える鈴音を他所にグイグイと背中を押して窓側に座る夕の前に放り出される。
ウィーンという音と共に夕の顔が窓から覗く
「すずもこっち乗りたくなった?」
嬉しそうに聞いてくる夕に鈴音は周りには聞こえないようにちょいちょいと手をこまねいて耳打ちをする。
"また後で合流したら、ずっと一緒に居れるからちょっとだけ我慢してね"
そう言うと、先程までの不機嫌そうな夕はどこへ行ったのか、顔周りに音符マークが見えるほどのご機嫌ぶりに変わる。
実際はと言うと1度サプライズの仕掛けで夕から離れるのだが、今ここで言うほどすずもバカではない。
その様子が可愛くて、ふふっと笑いながら鈴音もその間に洗濯を干したりと出来ることを済ませておく事にした。
今日は一段と寒くてベランダに出ると思わず身震いをしてしまう。さむさむ〜と、独り言を言いながら洗濯を干していく。
「言ってくれたら手伝ったのに」
とガラガラっと扉が開く音と共に夕の声がする。
振り返ると、そこにはふわっとセットされた髪の毛に、いつもとは少し雰囲気の違う服。
鈴音が着ている服の色と少しリンクしているのに気づき少し気恥しい気持ちになるものの、そんな気持ちが吹き飛ぶ程にかっこいい夕。
気づいた時には手に持っていた洗濯物を下にポトッと落としてしまっていた。
「あ!落としちゃったじゃん!!」
慌てて拾ってパンパンと叩いて干そうした手を夕に後ろから包み込まれて、再び落としそうになった所を夕がすかさず反対の手でキャッチする。
そのせいで、後ろからハグをされた様な感じになってしまいさすがに慣れてはいるものの、今日の格別のかっこよさにふわりと香るいつもとは違う香りの夕に鈴音はまた固まってしまう。
「危なかったね、、、なんで固まってるの?可愛いね」
当たり前のようにチュッと頭にキスをする夕。
パチパチとその洗濯を干すと、再び鈴音の手を触り
「凄い冷たくなっちゃってる、残り俺やっとくからすずは部屋で温まってて?」
両手で温めるように鈴音の手を包み込んでそういってくれるも
「今日は誕生日なんだから私にやらせてよ!!」
と言うものの、夕は有無も言わさない様子で背中をグイグイと押して部屋へと鈴音を押し込んでいく。
鈴音達はいつも出来る方がする、というスタンスで家事を分担しているものの、殆どはいつの間にか夕が終わらせてしまっている為、割合で言うと2:8くらい。
初めの方は申し訳なくて、夕の負担になっているの様な気がして、キッパリ分担しようと提案したのだが
"すずの為にできることは何でもしてあげたいし、やりたくてやってるんだから今まで通りがいい。家事してすずに褒めてもらう時間が無くなるのがいやだから俺の楽しみを奪わないで"
とまで言われてしまい、その後何度か提案しても同じ答えが返ってきて、一向に鈴音に家事をする時間を与えてくれない為、今では諦めて朝ご飯や夕が遅い時に家事や夜ご飯を作るのみになっている。
今日くらいはと思っていたものの、そうそうに失敗である。
しかし、今日のプランは絶対に喜んで貰えるに違いない!と、気合いを入れて温かいコーヒーとココアをいれていると、夕がベランダから帰ってきてスタスタと鈴音の方にやって来て
「温まらせて」
そう言いながら鈴音に抱きついて手を絡めてくる。
抱きついてはいるものの、鈴音のヘアセットを崩さないように加減をしている当たりさすがだなあと思いながら夕を見上げて
「寒いのに干してくれてありがとう」
笑顔を向けてそう言うと、夕は嬉しそうに笑ってキスを落とす。
「コーヒーいれたよ!これで温まろ!」
予定の時間にはまだ時間がある為、テレビを見ながら少しゆっくりする事にした。
あー!早く驚いた顔が見たいなあ!とソワソワする鈴音を見て、夕は何を言うわけでも聞くわけでもなく嬉しそうに幸せそうにニコニコと笑っているだけだった。家を出発する時間になり、どこに行くか尋ねてくる夕にご機嫌に"秘密〜!"と答えながら次々と電車やバスを乗り継いで山奥へと進んでいく。
普通、こんなにも山奥に行先も伝えられずに連れていかれると少しは不安に思っても良いはずなのに、夕を見てみると不安そうな様子は一切なく、むしろ幸せそうな顔で鈴音をみてニコニコしている。
「夕、不安とかないわけ??」
教えていないのは鈴音自身にも関わらず、たまらず夕に聞いてしまった。
すると夕は、きょとんとした顔をして
「なんで不安になるの?」
と聞いてくるので
「こんな山奥に連れてこられてるんだよ??」
すると、クスクスと笑いながら
「テレビの見すぎだよすず」
可笑しくてたまらないといった様子でずっと笑っている。
「もう!そんなに笑わないでよ!」
そう怒って見せると、ふーっと息を整えて
「すずに連れていかれるなら、俺は地獄でもどこでも喜んでついて行くよ」
とクスッと少年のように笑ってみせる夕。
そんな事を恥ずかしめもなくサラリと言ってみせる夕に、鈴音は顔を赤らめる。
「も〜〜〜!!!」
両手で顔を覆っていると、降りる駅名を車内アナウンスが知らせる。
「あ!ここだよ!早く早く!!」
夕の背中をグイグイと押して駅のホームへと急かす。
山奥の駅、当たり前ように無人で切符を箱に入れるタイプで昔の自分たちの最寄り駅を思い出させて懐かしい感情が湧いてくる。
駅を出て駐車場に行くと、そこには鈴音が頼んでいたある人達が
(((おめでとうー!!)))
パーン!と銃声かのように響き渡るクラッカーの音。
ビクッと体を震わせた夕だが、その奥にいる人たちの姿をみてクスッと笑う。
「ありがとう」
心から嬉しそうにそういう夕に鈴音はソワソワとしながら
「ねぇ!びっくりした??!今年もみんな勢揃い!!びっくりした?!?」
そう言って夕の顔を覗き込むと、夕はニコッと笑って鈴音を抱き寄せて頭に軽くキスをした。
「うん。びっくりしたし、すっごく嬉しい、ありがとう。」
周りにみんながいる事も忘れてイチャつく2人に耐えられないといった様子であっくんがキレ始める。
「おい!お前ら!!俺らいるんだからな!!そーゆーのやめろよな!!!」
プンプンと怒っているあっくんを気にもとめない様子で鈴の頭の上に顎をおき
「いーじゃんもう俺ら結婚するんだからこれくらい新婚なら普通でしょ」
と、こんなにもあっさりと言うものかと鈴音も空いた口が塞がらない。
((((((えーーーーー!?!?!)))))
今度は山中に響き渡るアラサーの叫び声。
「ちょっと待ってどーゆーこと?!」
「聞いてないんだけど?!?」
「いやーん!すずおめでとう♡」
「嘘だろ、、、また既婚者増えんのかよ、、、」
皆んな口早々に質問が途絶えないと言ったように尋ねてくる。
「ちょっと夕!こんなサラッと報告しないでよ!!」
そう怒ると
「ごめん、だって嬉しくて」
と笑ってみせる夕の顔を見ると、なんでもいいや、と思えて皆を落ち着かせる事にまずは全力を注いだ。
そしてまだ駅前にいることに気づいた鈴音達は早く場所を移動させなければと、二手に別れて車で移動することになった。車はてっきり夕と一緒だと思っていた鈴音だが、2人を一緒にしたら片方の車に乗った者が聞きたいことが聞けずに事故を起こすだのなんだのと言われて別々になってしまった。
鈴音も少し残念ではあったが、まぁみんなが自分の事のように喜んでくれている事が分かって嬉しくもあった。
しかし、明らかに不機嫌そうな男が1人。
言うまでもなく夕である。
今日は俺誕生日なんだけど。
すずと離される意味が分からない。
新婚なのに。
といつもはみんなに言われるがまま、されるがままに動いていた夕が、とんでもなく駄々を捏ねていた。
鈴音にはそんな姿も可愛く見えてクスッと笑っていると。
夕とバチッと目が合い、ムッと怒ったような顔を向けられる。
いや、怒っているのだ。
俺と一緒じゃなくてもすずは平気なのかと言わんばかりの不満顔である。
そんなかたくなに車に乗ろうとしない夕に
「夕、乗る。早く。」
と佳子が車を指さして言う。
すると夕は鬼でも見たかのような怯えた顔をして車に大人しく乗り込んだのだ。
佳子は昔からお母さん的存在で、みんなをまとめてくれる。空手の有段者でもある佳子には誰も挑むことはしないのだ。かつてあっくんが佳子に何度注意されても、ふざけて返して校則違反を繰り返していた時、目の前で素手であっくんの椅子を真っ二つにした事があり、それ以来は幼なじみ達の中で、"佳子を怒らせてはいけない"というのが暗黙のルールとなっていた。
とはいえ、佳子は普段は気さくで優しい性格だ。正義感が強いため、ルールを破ったり悪い事をした時に相手を思って怒るのが佳子。
今回に関してはあまりにも夕も諦めないし周りも諦めないのを見ていて限界が来たのだろう。と鈴音は予想した。その予想は的中していたようで
「ふ〜、あまりに長いからついキレちゃった。ごめんね、夕。」
と謝っている。
夕はと言うと、不機嫌そうに
「身の危険を感じたから仕方ない。すずとは後で会える
し。。。」
全く納得してない顔で答えている。
もう既に車に乗り込んでいる夕と佳子と沙奈の3人と杏奈、あっくん、あゆちん、鈴音に別れて移動することに。
「ねぇ、あんたいくまえに旦那の機嫌ちょっとでもいいから直してきて!」
杏奈がコソッと鈴音に耳打ちをする。
「えぇ〜?!無理だよ」
そう答える鈴音を他所にグイグイと背中を押して窓側に座る夕の前に放り出される。
ウィーンという音と共に夕の顔が窓から覗く
「すずもこっち乗りたくなった?」
嬉しそうに聞いてくる夕に鈴音は周りには聞こえないようにちょいちょいと手をこまねいて耳打ちをする。
"また後で合流したら、ずっと一緒に居れるからちょっとだけ我慢してね"
そう言うと、先程までの不機嫌そうな夕はどこへ行ったのか、顔周りに音符マークが見えるほどのご機嫌ぶりに変わる。
実際はと言うと1度サプライズの仕掛けで夕から離れるのだが、今ここで言うほどすずもバカではない。