青空@Archive
 ボクの親は、どちらももういない。
 オヤジはボクがまだ右も左も分からないくらい小さかった頃に、ボクと病弱だった母さんを置いて突然行方をくらました。
 小さかった頭で覚えてるのは一つきり。
 今日みたいに空はどんより灰色のクリスマス。
「行ってくる。澪、紫苑……愛してる」

 もう顔も覚えていないオヤジが、僕の頭をポンポンと二回叩いて玄関の扉を開け――そして二度と戻ってこなかった。
 まさか一枚の写真すら残っていないなんてね。
 母さんは女手一つで僕を育ててくれたけど、数年前、不慮の事故で亡くなった。
「父さんを待っていてあげて……いつか必ず……帰って……くるから……」
 それが母さんの最後の言葉。
 母さんは、病院で息を引き取る直前まで、そう譫言のように言い続けていた。
 母さんの葬式にすらこなかったオヤジ――。
 けれど、不思議と悲しみや怒り、恨みなんて負の感情が浮かんできたことはない。
 唯一浮かんだのは、純粋に「会ってみたい」って思いだけ。
 だから――、
「一体オヤジは何やってんだよ!?」
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