青空@Archive
「何って、今自分で見たところじゃないか」
ギロリ。
軽口に睨みをきかせると、藍はより面白そうに口元を吊り上げケラケラと笑うのだった。
まったく、人ん家の事情だと思って……。
本がめくられるとき、脳裏に映った鮮明な映像(ビジョン)には、一人の背の高そうな男が、見たこともない場所で青空を見上げて佇んでいた。
草の生い茂る草原が断崖によって途切れている。
男は仮面舞踏会に出るような面をかぶり、ロングコートに両手を突っ込んでいた。目元は見えないが口元は笑っているようだった。
そして、次の瞬間には男は、足元から溢れる暗雲に飲まれて見えなくなった。
あれがボクのオヤジ。そして同時に、世界の――敵。本当かよ?
「それで? 世界中探して、雲の原因であるオヤジを見つけて止めろって? その前にこの本の言ってることを信じろって?」
二人は神妙な面持ちで頷く。
アホか。そんなのまるで、マンガや小説の話じゃないか。そんな突飛な話、ほいほい信じられるかって!
そして問題はもう一つ。
「今、飛行機飛んでないし、海外なんてそうそう行けないんだけど……。なぁ藍あの場所、オヤジは一体どこの国にいるっていうんだ?」
あんな奇妙な場所、日本にあるとは思えない。
「? 何を言ってる。君が今、持ってるだろ?」
「はい?」
ボクが右手で抱えているのは、主人公のアリスが時計を持ったうさぎを追いかけて、摩訶不思議な世界へ迷い込む物語。一冊の本。
ああそうですか。国は国でも不思議の国ってか。
益々嘘臭い。臭さは某ニシンの缶詰めの如く、だ。
100年もの昔に、数学者でもあったルイス・キャロルによって紡ぎ出されたこの物語が――、
「入り口だ。親父さんは、絵本世界のどこかにいる」
「いや、無理だろ普通に考えて」
「残念ながら」
答えたのはおじいちゃんだった。
「普通じゃない。それができるのが、うちの家系――『書渡の天瑠璃』。紫苑。お前はその末裔だ」
……都合よくない?
「そういうことだ。よし、んじゃいくぞー! 本の中ー!」
「ノリが軽い!!」
ギロリ。
軽口に睨みをきかせると、藍はより面白そうに口元を吊り上げケラケラと笑うのだった。
まったく、人ん家の事情だと思って……。
本がめくられるとき、脳裏に映った鮮明な映像(ビジョン)には、一人の背の高そうな男が、見たこともない場所で青空を見上げて佇んでいた。
草の生い茂る草原が断崖によって途切れている。
男は仮面舞踏会に出るような面をかぶり、ロングコートに両手を突っ込んでいた。目元は見えないが口元は笑っているようだった。
そして、次の瞬間には男は、足元から溢れる暗雲に飲まれて見えなくなった。
あれがボクのオヤジ。そして同時に、世界の――敵。本当かよ?
「それで? 世界中探して、雲の原因であるオヤジを見つけて止めろって? その前にこの本の言ってることを信じろって?」
二人は神妙な面持ちで頷く。
アホか。そんなのまるで、マンガや小説の話じゃないか。そんな突飛な話、ほいほい信じられるかって!
そして問題はもう一つ。
「今、飛行機飛んでないし、海外なんてそうそう行けないんだけど……。なぁ藍あの場所、オヤジは一体どこの国にいるっていうんだ?」
あんな奇妙な場所、日本にあるとは思えない。
「? 何を言ってる。君が今、持ってるだろ?」
「はい?」
ボクが右手で抱えているのは、主人公のアリスが時計を持ったうさぎを追いかけて、摩訶不思議な世界へ迷い込む物語。一冊の本。
ああそうですか。国は国でも不思議の国ってか。
益々嘘臭い。臭さは某ニシンの缶詰めの如く、だ。
100年もの昔に、数学者でもあったルイス・キャロルによって紡ぎ出されたこの物語が――、
「入り口だ。親父さんは、絵本世界のどこかにいる」
「いや、無理だろ普通に考えて」
「残念ながら」
答えたのはおじいちゃんだった。
「普通じゃない。それができるのが、うちの家系――『書渡の天瑠璃』。紫苑。お前はその末裔だ」
……都合よくない?
「そういうことだ。よし、んじゃいくぞー! 本の中ー!」
「ノリが軽い!!」