青空@Archive
それが援護の合図だったのだろう。
船上の海賊達が、烽火を上げ、船を目掛けて駆け出したボクらを見つける前に、もっともっと目立つ最高の囮(デコイ)が戦いの場に躍り出る。
カチ、カチ、カチ。
コチ、コチ、コチ。
二種類の音色が、同じビートで戦場の時を刻む。
カチ、カチ、カチ。
コチ、コチ、コチ。
「なんだありゃあ!?」
さすがの荒くれ達も、音の方を振り向くと一斉に目を見張る。
「ひゅーう。これはこれは。どこいったかと思ってたら、一体今までどこに潜んでやがったんだ、」
後ろをフワリフワリと浮かびながら付いて来る妙に和風のピーターが、驚きの声を上げた。
「『時計ワニ』!」
数多の視線を受けながら戦場へと現れたのは、海賊船の半分はあろうかというサイズの、とてつもなく大きな、それでいてどこか目元に愛嬌のあるワニだった。
規則正しく上下する腹部からは、同じく規則正しく針の進む音がしている。
そしてそのワニのゴツゴツした背に騎手よろしく乗っているのは、真っ白な体毛に燕尾服を重ね、鼻眼鏡を掛けた長い耳の紳士。
『さあ戦いの時間です。しかしわたくし、あまり長くなると飽きてしまいますぞ? 今後のスケジュールも詰まっております故』
ワニに乗って懐中時計を気にする巨大なウサ耳紳士……食物連鎖云々を抜きにしても、不気味な絵面である事この上なかった。
「あれ? なんか時間を気にして……ってあの耳、もしかして時計ウサギか!? それじゃ囮って……おい、そんなスケールじゃないだろ! あれ。フック船長どころか船まで食べるんじゃないか?」
「ちょっと、はしゃぎすぎよシオン。でもまぁ、確かに……。私達にも教えないなんて、と思っていたら、なによ。アイったら、一人であんな面白い事を考えていたのね」
目立たなくてはいけない役割としては、最高の配役だった。右舷方向から迫る囮のお陰で、海賊達はボクらを振り向きもしない。
船上の海賊達が、烽火を上げ、船を目掛けて駆け出したボクらを見つける前に、もっともっと目立つ最高の囮(デコイ)が戦いの場に躍り出る。
カチ、カチ、カチ。
コチ、コチ、コチ。
二種類の音色が、同じビートで戦場の時を刻む。
カチ、カチ、カチ。
コチ、コチ、コチ。
「なんだありゃあ!?」
さすがの荒くれ達も、音の方を振り向くと一斉に目を見張る。
「ひゅーう。これはこれは。どこいったかと思ってたら、一体今までどこに潜んでやがったんだ、」
後ろをフワリフワリと浮かびながら付いて来る妙に和風のピーターが、驚きの声を上げた。
「『時計ワニ』!」
数多の視線を受けながら戦場へと現れたのは、海賊船の半分はあろうかというサイズの、とてつもなく大きな、それでいてどこか目元に愛嬌のあるワニだった。
規則正しく上下する腹部からは、同じく規則正しく針の進む音がしている。
そしてそのワニのゴツゴツした背に騎手よろしく乗っているのは、真っ白な体毛に燕尾服を重ね、鼻眼鏡を掛けた長い耳の紳士。
『さあ戦いの時間です。しかしわたくし、あまり長くなると飽きてしまいますぞ? 今後のスケジュールも詰まっております故』
ワニに乗って懐中時計を気にする巨大なウサ耳紳士……食物連鎖云々を抜きにしても、不気味な絵面である事この上なかった。
「あれ? なんか時間を気にして……ってあの耳、もしかして時計ウサギか!? それじゃ囮って……おい、そんなスケールじゃないだろ! あれ。フック船長どころか船まで食べるんじゃないか?」
「ちょっと、はしゃぎすぎよシオン。でもまぁ、確かに……。私達にも教えないなんて、と思っていたら、なによ。アイったら、一人であんな面白い事を考えていたのね」
目立たなくてはいけない役割としては、最高の配役だった。右舷方向から迫る囮のお陰で、海賊達はボクらを振り向きもしない。