青空@Archive
「アリス!?」
 ここはいわば縮小されたネバーランドだ。自分の世界以外で死んだらどうなるかは、アリスだって承知している筈なのに。
「もううるさいねぇ、この娘は!」
「危ない!」
 女王が握り締めた短剣を振り上げ、アリスの細い喉元目掛けて振り下ろした。
(アリスっ!)
 ボクは思わず目を逸らした。

 パン。

 え――?
 乾いた大きな音が、連続で空気を切り裂く。

 パン。パン。パン。

 不思議の国に似つかわしくない計四発の凶弾が、二人の柔らかな肌を、肉を、内臓を突き抜けた。
「おい! 藍、おま……」
 船長が銃を構えたままの藍に言い寄るが、肩を掴んだところで声を失う。
 硝煙が立ち上る鉄塊を握るその男の口元は、不気味に笑っていた。
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