青空@Archive
「つまりなんだ、結局全て、お前たちの茶番か」


柄にもなく心配なんてしたからか、フック船長は不機嫌な様子で甲板に置いてあった樽にドカッと腰を下ろした。


ぶつぶつ「この俺が……」とか「苦労は……」とか言ってるのを見る限り、あれだけの殺気を放っていた人物とは到底思えない豹変ぶりだった。


ちょっとかわいい。


ギロ。

察したのか、物凄く睨まれた。

う、やっぱ怖っ!


「そう言うな。俺だってギリギリまで躊躇してたろうが?あれは演技でも何でもないさ」

藍は既に甲板に足を広げてくつろぎモードに入っている。


「正直な話、俺はホントにこの世界をぶち壊す事になるかと思った」

「あんたはそこでなぜ、私の心配より先にそれを言う!」


その隣でもっと早くからくつろぎモードに入っていたアリスが、藍の小脇を肘でつつく。


「あうっ」

あ、過敏に反応した。

弱点見っけ♪



結論から言うと、アリスは死ななかったし不思議の国も崩壊なんて事にはならなかった。

それはつまりハートの女王も死ななかったってコト。


彼女が死んでしまっていたら、何もかもが無意味になっていただろう……ってさっき藍に言われた。


言われてみれば女王だって物語(この世界)の登場人物なのだ。

いなくなったら、世界が狂う。


この船の宝物庫が空だった理由(わけ)は、船長の手下達が別な世界での戦いで死なないようにフック船長が、それぞれ持てるだけ持たせていたからだった。

それ程までに、役に関わらず、一人一人が背負う異世界での責任は重い。



自分が死ねば世界が消える。



なら、なぜ女王は自分の世界を消し去るような事を……?
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