「お飾りの役立たずは不要だ」とクズ皇太子に婚約破棄された大聖母、隣国の王子に(契約)結婚しようとスカウトされる~あなたが本当に愛する人と幸せになるよう大聖母から悪女にポジションチェンジしますわ~
「ギルモアもバカじゃない。ウイルクス皇帝や皇太子の出方次第で矛を収めるだろう。ムダに帝国民を傷つけたり奪ったりはしないはずだ。そんなことをすれば、われわれがだまっていないことを知っているだろうから」

 剣士であるチャーリーの肩も腕も立派である。もたれていて安心出来る。なにより、あたたかい。それが白色のシャツを通してでもよくわかる。

「ええ、わかっているわ。大丈夫。わたしは大丈夫だから」

 何度も同じ言葉を繰り返していた。

 悪女だからではない。自分勝手なわたしは、祖国のことより彼のことしか考えられなかった。

 いまのこの二人の親密なひとときが、いつまでも続いてくれたらいいのに、と願うことしか……。
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