「お飾りの役立たずは不要だ」とクズ皇太子に婚約破棄された大聖母、隣国の王子に(契約)結婚しようとスカウトされる~あなたが本当に愛する人と幸せになるよう大聖母から悪女にポジションチェンジしますわ~
 元婚約者に一度だって顧みてもらえなかったわたしを、というよりかまともに見てもらったことのないわたしを、そこまで想ってくれているのだから。

 そういうことにしておくことにする。

「イザベルがあなたの愛する人だと思い込んでいたの。じつは、見たの。あなとイザベルを。疫病が流行る前のことだけど、東屋で抱き合っていたでしょう?」
「もしかして、あのときの」

 彼はまた立ち上がると執務机に行き、抽斗からなにかを取り出して戻ってきた。
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