「お飾りの役立たずは不要だ」とクズ皇太子に婚約破棄された大聖母、隣国の王子に(契約)結婚しようとスカウトされる~あなたが本当に愛する人と幸せになるよう大聖母から悪女にポジションチェンジしますわ~
 彼に抱きしめられつつ、彼を欲していることに気がついている。彼の体は熱く、息遣いもまた熱く、そして荒くなってきているのと同様、自分の体も火照ってきていて汗がにじんできている気がする。それに、走ってもいないのに息苦しい気がする。

「口づけしていいかい?」

 熱い息とともに、上擦った声が耳にこそばゆい。

 なにか答えないと、と頭ではわかっている。しかし、ボーッとして言葉が思いつかない。

 反射的に瞼を閉じていた。

 書物に出てくるヒロインみたい、とボーッとした頭で思った。
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