「お飾りの役立たずは不要だ」とクズ皇太子に婚約破棄された大聖母、隣国の王子に(契約)結婚しようとスカウトされる~あなたが本当に愛する人と幸せになるよう大聖母から悪女にポジションチェンジしますわ~
「今朝は、いいお天気ですね」

 さわやかな笑みを浮かべつつ、両腕を頭上の太陽に向けて伸ばした。

(この静寂よ)

 様々な感情がうごめくこの沈黙がたまらない。

「大聖母」時代からよく味わった感覚が蘇る。

「あら、『ニセモノ大聖母』だったかしら?」
「キャサリン。意味合いは同じだけれど、少し違うわ。『まがいもの大聖母』よ」

 第一王子の側妃の言葉を、すぐさま第一王子の正妃が訂正した。

 嫌味ったらしく。わたしに対しての嫌味ではない。側妃に対してである。

 ここにいるレディたちは、つねに他者を貶めようとしている。隙あらばとって食おうとしている恐ろしい魔女たちなのである。

 正直、ゾッとする。
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