キスから始まる恋
俺の親父が脳卒中で倒れたのが中3の夏

なんとか命だけは助かったが障害が残った

そのため今までのように働けなくなり

お袋が必死で働きながら家計を支えている

まだ中学一年の弟と小学三年の妹

これからどんどんお金がかかる

だから俺は早くプロになってお袋に楽させてやりたい

そして、親父の心を少しでも元気づけたい

そんな思いから、毎日練習の後も自主トレをしていた





「からかって悪かったよ」

事情をしっている隆史はすまなそうに謝ってきた

「いや、俺の方こそムキになって悪かった。今日は練習付き合ってくれてありがとう」

今日の自主トレに隆史は付き合ってくれたのだ

練習の後だから疲れているにもかかわらず

文句ひとつ言わずに

「いや、俺もいい練習になった。また、いつでも付き合うよ」

「本当なら飯でもおごってやりたいんだが、なにぶん貧乏だから」

冗談のように笑っていったら

「いいって、お前がプロになったらおごってもらうからさ」

そういって小さく手を振りながら部室を出ていった






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