『春・夏・秋・冬』
「ね……あの人たちは?」

冬を見上げると、彼は少し目を伏せた。

「さっき僕たちを捕まえた人たちの話、チラッと聞こえたんだけど……。あの人たち、人身売買の商品……みたい」

「人身……売買?」

あまり馴染みのない言葉に、私は眉を顰めた。

「うん……。ちょっと信じられない話だけど、実際、外国ではかなり流通してることみたいだし、日本でも、あるみたい」

「え、日本でも?」

「うん。何年か前に摘発されてたでしょ? 暴力団関係の人が人身売買罪で捕まったって、ニュースでやってた」

「嘘……知らなかった」

平和に見えるこの国にも、そんな大昔のような出来事があるっていうことが驚きで、私は言葉を失った。

そして、一塊になっている子供や女性の一団を見る。

はっきりとは見えないけど、顔立ちが日本人ぽくない。中南米とか、アジア系な感じ……。

あの人たちは……これから誰かに売られていくの?

そんなこと……許されるの?

「これは僕の推測だけど。あそこに夏がいただろ? 夏は警察から派遣されてきた諜報員で、密かにここを探ってたんじゃないかな。山崎先輩が、仲間の1人で……」

冬はギュッと拳を握って、口をひき結んだ。

そんな冬を心配げに見上げていたら。冬はうな垂れながら、こう言った。

「夏……山崎先輩に、撃たれてた。……銃、で」

「え……?」

「無事だと、いいんだけど……」

祈るように体を折る冬。

私の頭は真っ白になった。

夏が……撃たれた。

あの乾いた音は、銃を発砲させた音だったんだ……。


──どうして?

私があそこにいかなければ良かったの?

そうすれば、夏も撃たれなくて、冬を巻き込むこともなくて……こんな状況を知ったら、きっと春は心配して泣いてる……。
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