12上の御曹司と女子高生は愛を育めない



「なんでそんなこと知ってるのかなって思うのは当然だよね。
実は僕の父親が三ツ沢グループ子会社の取引先社長なんだ。
それで父親の仕事に同行することもあるんだけど、ホテルの中庭で川井さん達を見かけてね。
ごめん、聞くつもりは無かったんだけど出入り口近くだったから隠れるしか無くて」


私は呆然としていた。
まさかあんなところを見られていたなんて。
どうしようもないやりとりはどこまで聞かれたかわからないけれど、ほぼ知られているんじゃ無いだろうか。


「ずっと落ち込んでいるようだったからもしかしたら話してくれるかなって思ってたけど、僕の方がそんな川井さん見てるのも我慢できなくなってしまって」


もう乾いた笑いしか出てこない。
片思いの相手からこういう質問されるって何なのだろう。
心配しているような言葉を聞きつつ、異性として意識しての行為と言うよりいつもの気遣いだろう。
やはり脈は無さそうだとわかって、何だかどっと落ち込みそうになる。


「ごめん、触れられたくなかったよね」


私の落ち込んだ様子を違う方向に取った横山君が慌てたように言うので、何だかどうでもいい気持ちになって笑う。


「ううん。世の中難しいなって思っただけ。
私が光生さんを振った理由が気になるってその場で聞いたんじゃ無かったの?」

「いや、所々は聞こえなかった。
ただつなぎ合わせればわかるけど、あんなに呆然とした表情で立ち尽くしてた三ツ沢さんを見るのは初めてでそういう点でも驚いたよ。
いつも自信に満ちあふれているあの人に、あんな顔させるなんて凄いなって」


呆然と立ち尽くしていたのか。
まぁ今まで交際後にフラれたことはあっても、きっと交際を申し込んだ直後にフラれた経験は無くて驚いたってところだろう。
だからこそ、もう面倒だから何も私に接触してこないわけで。

< 100 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop