12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「単にモテる自分が子供に拒否されたことが腹立たしかったんじゃないかな」
「年齢差を気にするくらいなら最初から交際申し込んだりしないと思うけど」
「だから子供ならすぐに応じると思っていたのに予想を裏切られたとか」
横山君はホットコーヒーを飲んで、私を真っ直ぐに見た。
その向けられた目は、恥ずかしいより見たくない物を突きつけられそうなのが怖くて視線を背ける。
「川井さんは、三ツ沢さんから離れてホッとしてるの?
その割にずっと元気が無いように見えるんだけど」
「そんなこと無いよ」
「三ツ沢さんとの会話についていけるよう必死に勉強していた時の方が、何だかんだ楽しそうに見えた」
ぐ、と無意識に奥歯を噛みしめた。
茶化すことも無い横山君の言葉は、私に気付きたくない事を指摘してくる。
あれから新聞も読まなくなった。先生に質問に行くことも無くなった。
いや、それは嘘だ。
あの時ほどでは無くてもこれは無駄な知識では無いからと少しは続けている、未練がましいように。
「追い詰めるつもりは無かったんだ。
でも何か理由がわかれば気持ちも少し楽になるんじゃ無いかな」
彼は始終真面目な表情で私に向き合っていた。
そこまで心配されていただなんて嬉しい。嬉しいのになんとも言えない気持ちになる。
それは目の前の片思いの相手より、あの我が侭お坊ちゃまが頭に浮かんでしまうこと。