12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


今日は土曜だけれど久しぶりに行きつけのカラオケボックスに一人で行く。
受付のスタッフさんも私が一人で二時間と申告しても、いつものことだと笑顔で対応してくれる。

目一杯歌って飲み物を飲みながら休憩していたら隣からギターの音が聞こえる。
カラオケボックスを利用するのは必ずしも歌う人だけではない。
お芝居の練習、仕事、多いのは楽器を練習する人だ。
特にエレキギターなんてカラオケの種類によっては、機械に繋いでカラオケ音源と練習できたりする。

高校に入ってしばらくしてだったろうか、ヒトカラをしていたら隣からエレキギターの音が聞こえてきた。
無視して歌っていたら、私の曲に合わせて弾いていることに気が付く。
偶然かと思っていたけれど、次の曲も弾いていることで確信した。

私は自分のカラオケの音をマイクのみにし、隣の部屋から聞こえるエレキギターの音に合わせて歌った。
これは最高に楽しかった。なんせ素人の歌に誰かが生で演奏を合わせているのだ。

何度か相手を確かめたかったが叶わず、今回も確かめようと飲み物を取るついでと廊下を歩きながら隣のドアの窓を覗くつもりが既に部屋は空。
残念な気持ちになりながらも気分転換のためただ歌って、ふと光生さんは何の曲が好きだろう、と思った自分の頬を思わず叩いた。
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