12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


そして当日、待ち合わせは水族館近くの駅。
落ち着かなくて待ち合わせ30分前に着いてしまったがまだいない。
いつも車移動だから乗り換えとか迷っていないと良いけれど。

駅の人混みから背の高い人がすぐに目がついた。
その人は深い緑の膝上くらいのダッフルコートを羽織って現れた。
いつもよりカジュアルだ。雰囲気も全体的に感じも若い、ような。


「待ったか?」

「いえ」


ちらちらと行き交う人が光生さんを見ている。
水族館目当ての人、それもカップルも多いのに女性が光生さんを見て目を輝かせた後、私に視線を移し不審そうに見る。それをどれだけの今までやられているのやら。

二人で並んで水族館に行けば当然のように私の分のチケットも買ってくれ、お礼を言って入る。


「イルカのショーは見たいだろ?」


当然のように聞かれて私が思い切り頷けば光生さんは優しく笑みを浮かべる。
それを思わずじっと見てしまった。
今、私はドキドキしているだろうか。今日はそれも確認したいところだ。


「どうした」

「いえ。ところで水族館ってどれくらい久しぶりに来ましたか?」


見上げると光生さんはきょとんとしてすぐに軽く笑う。


「来たことが無い」


その返答を考えていなかったので言葉に詰まる。
だいたい学校やそれこそデートの定番だろう。
そこで思い出した、春日部さんが光生さんが普通の学生生活を送っていなかったと言うことを。

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