12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


「おい、何で叫ぶ」


一気に不機嫌な顔になった光生さんに、確かに不味い対応だったかと思わず謝れば、私の後頭部に大きな手が回って、あっという間に唇と唇が合わさる。

呆然と目を開けたまま固まっていると、光生さんは動じること無く目を少し細めて私の目を覗き込んでいた。

そして唇の間から甘い物が押し込められ、反射的に逃げようとしたけれどそのまま抱きしめられてキスが続く。

甘い、チョコの甘さが私の口へと広がっていく。
これはチョコの甘さだけなのだろうか、他にも理由はあるのかな、とぼんやりしてきてしまう。

ガチガチに強ばっていた私の身体が一気に緩み、がくんと倒れそうになったのを光生さんが自分の肩に私を引き寄せた。


「とても甘いな。最高だ」


耳にとろけそうな声が聞こえる。
満足そうな、聞いたことも無いほど幸せそうなその声に、私は彼の背中に手を回す。

初めてのキスはチョコの味で、身体中が溶けてしまいそうだった。


しばらく抱きしめられたまま頭を撫でられていてぼんやりしたままだったが、紫央里、と名前を呼ばれてゆるゆると顔を上げる。

さっきまで溶けそうな気分を消すように、光生さんの表情は深刻そうなもので、私は不安げにその目を見た。


「以前、二月に取締役会があるって言っただろ。
それが来週なんだが大体の状況が固まった」


私にも影響する話なのだろう、私は身体を起こし光生さんに向き合う。


「さすがにすぐ俺を取締役に入れることは周囲を見て親父は控えたようだ。
だがそれはあくまで俺が今の部署をある程度軌道に乗せたいという意思を尊重して、という形にしたいらしい。

ようは今年中に取締役へ、流石に今年の株主総会で俺を社長にはしないだろうが、親父は後継者指名をして、あの女の息子が次期社長になることは潰しておくだろう。

だから、何か起きる可能性が高い」


最後、光生さんの声が低くなって私の顔が強ばる。
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