12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「紫央里!」
両親達が凄い形相で詰め寄ってくる。
もうこれで終わりだと思っていたのに何でまた。
矢継ぎ早の質問に疲れがピークに達していた私の目が据わる。
「・・・・・・疲れたの。お風呂に入らせて」
低い声に、ピタッと皆の言葉が止まった。
私は家族を放置しようやく部屋に入って座り込んだ。
頭の中が整理できない。
今日光生さんの両親に会ったのは芝居だ。
で、先ほど光生さんの言ったのは、暇つぶしの名目として使いたい、だけれどそれを私が拒否したので親を巻き込んだというところだろうか。
最低だ、最低過ぎる、三十路かな。
一句出来たな、ともう溶けそうな脳で自分にツッコミを入れた。
手に持っていたスマホが震え、面倒だと思いながら見れば誰かさんからのメール。あぁうざい。
『彼氏に愛の言葉くらい囁け』
という一文に、スマホを床に投げつけそうになる。
私はじっとその画面を見て、ある言葉を打ち込んで送信すると電源を落とした。
『優しくて素敵な人になら囁けますが、全く違うので無理です』
私はカーペットの上に倒れ込む。もうお風呂入らずに眠りたい。
きっと起きたら夢になっていそうだ。
だが残念ながら夢にはならず、これから面倒な御曹司から追いかけられる事になるのだった。