12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


「お前が気になった点はあるか?」


まさか私に意見を求められるとは思わず、たじろぎそうになったのを隠して、


「食事とか色々高いなと思いました。学生にはもう少し低価格のお店が欲しいです。せめて飲み物のペットボトルは安めだと良いなと。
あとベンチに日よけが欲しいです。
景色の邪魔をしないためだと思うんですけど、暑いだろうなって場所のベンチが多い印象でした」

「飲食に関しては入っている業者との兼ね合いがあるからな。ここだからこそという付加価値もある。
ただ水分は命に関わる。せめて水くらいは手軽に安全に飲めるよう配慮するのは考えても良いかもな。

それに日よけは今回お前を座らせて気になった。子供連れはなら、なおさら必要だろう。
参考になった」


そう言うとやっと車のエンジンがかかり、車が動き出す。
光生さんから真面目な返答が返ってきて、ただの高校生の意見でも茶化したり誤魔化すこと無く正面から考えてくれたのが無性に嬉しい。

光生さんは社会人で仕事をしていて、私はただの高校生。
だけど一瞬同じような立場で会話ができたような気がしてしまう。
彼の良いなと思う部分をまた見つけた気がして、それが凄く複雑な気分にさせた。


「ところで突き返してきたスマホだが」


高速で順調に走っている途中光生さんが話題を持ち出した。すっかり忘れていた、そんなものは。


「電源入れて持ち歩いてくれ。費用は俺が持つから俺との専用として」

「だから返すって言ったじゃないですか」


呆れたように言うと少し沈黙が漂う。
私はいぶかしそうに彼の運転している横顔を見た。

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