12上の御曹司と女子高生は愛を育めない


「あの女が俺を愛人の子だと言っただろ?
まぁ元々父親が結婚したいと交際していたのは俺の母親で、それを祖父達に引き離され見合い相手の、あの女と結婚した。
あの女にも前から男がいて、父親と結婚してからも男と関係は続いていたらしい。

俺には姉がいて、唯一父親とあの女の子供だ。そんな夫婦関係だからDNA鑑定までして確定してる。
姉もやはり家が嫌だったのか若い内に子供が出来て海外に行ってしまった。

父親の方も結婚して娘まで出来たのに、三ツ沢家から俺の母親と駆け落ちのように地方の都市へ逃げた。
その時の二人に産まれたのが俺だ。
だが母親は元々身体が弱くて、当時自分の実家を隠し小さな会社に勤めていた父親の給料では母親に満足な医療を受けさせられないことを悔やんでいた。

そこで祖父の登場だ。
隠れて様子をうかがっていた祖父は、母親と縁を切ること、俺を三ツ沢家長男として迎えること、そして父親が三ツ沢グループの次期社長となることを確約するのなら母親に手厚い医療を提供すると言ってきた。

父親は拒否していたんだが、母親が父親を説得して祖父の命令を受け入れた。
母親は自分の命なんて別に執着してはいなかったと思う。
ただ父親や俺の将来を考えて、三ツ沢の家に戻る方が良いと思ったんだろう。
四年近い両親の逃避行はそこで終えて、俺は三ツ沢家長男となった。

そしてその一年後、正妻に息子が生まれた。
父親は実家に戻っても正妻とは同居していなかった。
そんな時期に出来た子供だ、祖父も子供の父親は息子では無く正妻が当時付き合っていた相手とわかっていたようだ。

あの女は祖父に対して、俺の父親が家から逃げていた事への詫びとしてその男と手を切るから、他の男との間に出来た子を三ツ沢家の次男として迎えろと要求してきて、祖父はそれを飲んだ。

正妻としては他の男との間に出来た息子をあわよくば三ツ沢グループの次期社長に出来る可能性を得たかったんだ。
まぁそんな事があって父親は負い目と俺の母親を人質に取られていたから、祖父の命令全てに従った。

そんな複雑なうちの家でもし今の社長である俺の父親が死ねば、会社の株の多くを保有しているからそれが財産扱いとなり、父親の財産は全て合算された上で半分があの女、残り半分を俺たち子供三人で分けることになる。

そうなると会社の経営、命令指揮が混乱するから、父親は早めに俺に事業を承継させたいんだよ。
こういう身内だけで動かしている会社の事業承継は早めに手を打っておかないと後で大混乱を招く。

創業者と子の確執、兄弟との確執、それに嫁が加わるのがよくあるパターンだ。
社内は派閥争い、末端の社員は振り回されるだけで企業価値も落ちる。
某有名家具店のお家騒動なんてわかりやすい例だ、お前は知ってるかは知らんが」

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