12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
窓の外の景色が流れていくかのように淡々と語られる言葉。
だけれどそれは難しい上にあまりにも重い内容。
最後の話はわかっているようで、知らない部分もある自分の無知さが悔しい。
しかし後妻と思っていたあの女性が正妻で、あの温和そうな光生さんのお父さんが光生さんのお母さんと逃げた時に光生さんが産まれたとか、あまりに衝撃的な内容に頭が上手くまとまらない。
それに光生さんのお母さんはどこかで入院しているのか、一人で住まわれているのだろうかがとても気になった。
「あの、今、光生さんのお母さんは」
「あぁ、俺が小学校低学年の時かな、亡くなった。
父親は危篤と知って病院に駆け付けたが、俺は割と小さい頃は身体が弱くてな。
熱を出して寝込んでいたから母親が亡くなったのを知ったのはしばらくしてだった。
まぁ葬式には何とか出られたが、三ツ沢家に引き取られてからは母親に会うのを禁じられていたんで、棺の中の母親を見ても涙も出なくて逆に笑ってしまいそうだったよ」
ははは、と軽い笑い声で話した光生さんを見て、一気に腹の底から苛立たしさが沸き上がった。
光生さん、何も笑えていないじゃない。
自分がどんな顔で笑っているのか、気付いていないのだろうか。
「何笑ってるんですか」
低い声になった。
苛立っているのを抑えようとしたけれど、光生さんがどうした?と運転しながら不思議そうに声をかけてくる。
それがより私を苛立たせた。