12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「涙が出ることイコール悲しいなんて決まりは無いでしょう?!
今はそんなに冷静に色々受け止めてるのか消化してるのか知りませんが、当時は小学生で無理矢理小さな頃に母親から引き離されたんですよ?
感覚が麻痺して、心が、気持ちが閉じてしまっていたっておかしくないでしょ!
何で今の光生さんは冷静にその頃のお母さん達の選択を理解できるのに、自分の子供の頃の気持ちは理解できないんですか?!」
運転席の光生さんに思わず怒鳴るように言えば、光生さんはハンドルを握ったまま目を丸くして私を見た。
「ぎゃぁ!前!前!!」
少し先に渋滞の最後尾が見え、光生さんが慌ててブレーキを踏みスピードを落とす。
カーナビには少し先に事故の表示。車は高速道路だというのに完全に停止してしまった。
「うわぁ危ないですね、衝突してましたよ」
私がバクバクしている心臓を隠しながら言うと、光生さんは前を向いたまま黙っている。
そうだ、先ほど偉そうに怒鳴ってしまったんだった。
渋滞に突っ込みそうになった事で一瞬忘れていた。
一番辛かったのは光生さんだ。
私には想像できない思いをしてきたのに、まだ高校生で何も知らない私が偉そうに言ってしまった。
でも、自分を大切にしてないような気がしてそれに腹が立って我慢できなかった。
こんなに仕事を頑張っていて、何だかんだ今日は私の要求を優先させようとしてくれた。
そういうきっととても優しい人が、自分を軽蔑するかのように言うのが嫌だったから。